商品やサービスを見込み客に売るために相手を説得する必要があります。
説得と言うと相手に自分の意見を押し通すというイメージがありますが、正しい説得というものは、相手との人間関係を築き、お互いの利益のために結論を見出す共同作業だということを前回お話させていただきました。
そうはいっても、そう簡単に交渉がまとまるわけではありませんね。
交渉には、様々な難問があります。
今回は、説得における障害についてその解決策とともにお話したいと思います。
説得における5つの壁とは!?
『G・リチャード・シェル』氏と『マリオ・ムーサ』氏は、『味方を増やす「口説き」の技術』という著書で、いわゆる口説きのテクニックについて解説していますが、さらに説得における障害となるものを次のように定義しています。
【説得における5つの壁】
・人間関係の壁
・信用の壁
・コミュニケーションの壁
・信念の壁
・利益の壁
それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう!
説得における5つの壁〜①人間関係の壁
相手を説得する際に、交渉が上手くいかない原因の多くは『人間関係』によるものだと思います。
そもそも、人間関係がしっかりと築けていない場合は、相手は最初からあなたの意見に熱心に耳を傾けることはないでしょう。
逆に、人間関係ができていれば、相手にとってあまり興味がないことでも、あなたの話なら聴いてみようということになるのではないでしょうか。
『味方を増やす「口説き」の技術』という本では、『人間関係』の基礎として『社会心理学』の要素である次の3点をあげています。
①類似性
人は話し手と共通性を認めると親近感をわくものです。
本書では、保険外交員の例がとりあげられていました。
私も長年金融機関で保険商品の販売をしていたことがあるので、この例にはとても共感しました。
優秀な保険外交員は、保険商品の知識が豊富であるとか、話法が巧みであるのではなく、顧客となりうる人との間の共通の意見や嗜好、所属団体、ライフスタイルを見つけて顧客との人間関係を築くのが上手いということです。
私も優秀な保険外交員と商談の場に同席したときに感じたのが、彼は自社の保険商品の特徴をほとんど語っていないということでした。反対に顧客の方が自分のことや家族のことを熱心に話していました。お客さまが嬉しそうに孫の話をしているときに、この契約は成立したなと感じました。まだ、保険の外交員は自社の商品パンフレットさえお客さまに見せていませんでした。
②好意
上の保険の外交員の例をみると、お客さまは明らかに保険の外交員に好意をもっているように思えました。人は自分の話を熱心に聞いてくれる人に好意を持つと思います。逆に、好意を持っている相手だからこそ、家族構成や健康状態、契約における決定権者など保険外交員が聞きだしたい保険契約に必要な情報もお客さまの方から話してくれるのです。
③相互利益
『返報性のルール』ともいいますが、『人は誰かに何かをしてもらったら、お返しに自分も何かをしてやることが多い』ということです。
説得における5つの壁〜②信用の壁
人間関係にも通じるところがありますが、やはり説得の際に相手から信用してもらえなければあなたの話に耳を傾けてくれることはないでしょう。
信用とは、こちらの決定権限、有能さ、専門知識の有無、信頼できる人かどうかなど人間性に対する相手の評価です。
『マリオ・ムーサ』氏は、『味方を増やす「口説き」の技術』という著書で、信用という問題については、相手はあなたのことを直接知っている必要はないと言っています。
インターネットビジネスにおいては、顔も知らない相手から商品やサービスを購入することがほとんどだと思います。だからと言って、消費者はネットで商品を購入するときに信用などというものは問題にしていないというわけではありません。顔が見えない相手との取引ですからなおさら信用というものが重要になってきます。
では、顧客は売り手のことを信用できるのかどうやって判断するのでしょうか。
それは、売り手に専門的な知識があるのかどうかというところだと思います。
説得における5つの壁〜③コミュニケーションの壁
相手との人間関係を築き、信用してもらえて初めてあなたの話を聞いてもらえる準備ができました。
しかし、ここからが説得のスタートです。
相手を説得するのに、相手の脳を酷使させてはいけません。こちらの主張をわかりやすく理解してもらう必要があります。
それには、コミュニケーションの壁を取り除くことが必要です。
それには、相手の言葉で話すことです。
相手が普段使っている言葉で話せば、相手に理解してもらいやすいだけではなく、相手に共感してもらいやすくなります。
相手が一番反応しやすい具体的な言葉や言い回し、比喩などを探ってみましょう。
説得における5つの壁〜④信念の壁
コミュニケーションの壁に通じることですが、相手の好きな言葉や言い回しというものは、相手の価値観や信念から生まれてくる場合が多いです。
そのため、相手の思考プロセスや価値観、嗜好について可能な限り情報を集めることが重要です。
相手の好む言葉や言い回しを知り、それを使うことは聞き手のモードに波長を合わせることです。
『信念バイアス』というものがあって、『人は自分の信念に合致する結論ならどんなものでも受け入れる傾向がある』ということです。
また、『一貫性の原理』により、『人は以前に自分の宣言した価値観や基準と一貫した行動をとろうとする』もので、相手の信念や価値観に訴えれば説得はしやすくなります。
説得における5つの壁〜⑤利益の壁
相手のモードに波長を合わせたとしても、相手の利益に反するようなあなたの意見は聞き入れてもらえない可能性が高いと言えます。
なぜなら、人は自分の欲しいものにしか興味がないからです。
あなたの意見は、いったい自分にとってどんな得があるのかというのが大方の聞き手の態度でしょう。
聞き手は自分の利益という窓越しにあなたの意見を検分します。
そのため、あなたの意見が相手の利益に反するようでしたら、その窓はピタリと閉ざされてしまうでしょう。
相手の利益について考えるための重要な視点があります。
①あなたの意見を支持すると相手にどのような得があるのか?
②支持してもらうのと引き換えに相手が欲しがっているものであなたが提供できるものがあるか?(交換条件)
③相手がノーと言う可能性があるとすれば、それはなぜか?
あなたの主張は、相手がが抱えている問題、期待、ニーズ、不安、願望、目標についてプラスになりそうかよく考えてみましょう。
以上、5つの説得の壁を取り払い、あなたの主張を相手に取り入れてもらいましょう。
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