消費者の購買行動を決定づけるのには消費者の考え方や嗜好などの『内的要因』と環境などによる『外部要因』がありました。
それでは、消費者が購買行動を起こす上でどのような意思決定のプロセスを通っているのでしょうか!?
また、消費者の意思決定を乱す『バイアス(偏向)』にはどのようなものがあるのか見ていきましょう!
消費者の購買までの意思決定のプロセスには2種類ある!
『ジェイムズ・A・ムレイ』氏はその著書『行動科学マーケティング』で、消費者の購買までの意思決定のプロセスには2種類あると説明しています。
『ジェイムズ・A・ムレイ』氏が分類した意思決定のプロセスの種類は以下のものです。
①システム1
この意思決定の方法は、自動的、反射的、連想的情報処理によるものです。
直感や本能に頼ったもので、脳の部分で言えば『大脳辺縁系』で働くしくみです。
情動やモチベーション、運動機能、生存能力をつかさどる部分です。
②システム2
この意思決定の方法は、熟慮的、分析的、体系的情報処理によるものです。
論理や思考に頼ったもので、脳の部分で言えば『大脳新皮質』で働くしくみです。
意識した思考をつかさどる部分です。
『ジェイムズ・A・ムレイ』氏は、この2つの思考法をわかりやすく対比した例をあげています。
【練習問題】
釣り好きの人がいて、『釣り竿』と『エサ』を買って釣りに出かけるですが、予算は11,000円です。
釣り竿はエサより、10,000円だけ高いということですが、エサの値段はいくらでしょう?
釣り竿の値段は、10,000円、エサの値段は1,000円と答えた人が多かったと思います。
(私自身もそう答えました)
この計算事例は、『直感的思考』と『論理的思考』の違いを表しています。
最初に問題を読んだとき、直感的に『簡単、10,000円にいくら足せば11,000円になるだろう?』と考えたのではないでしょうか?
ちょっと落ち着いて考えれば、釣り竿10,000円とエサ1,000円では、価格差が9,000円となり、すぐに不正解だとわかると思いますが、ついつい脳が楽して直感的に答えを導き出そうとしてしまいます。
しかし、実際には私たたちが生活していく上では完全にどちらかの思考だけに偏ることはなく、モチベーションや機会、能力によって思考方法を使い分けたり、組み合わせて使っているのだと思います。
自動販売機でジュースを買うのと、生命保険を契約するのでは自ずと意思決定のプロセスを使い分けることでしょう。
消費者の購買までの意思決定を惑わす様々なバイアス(偏向)!
消費者は購買活動をする上で『直感的思考』と『論理的思考』を使い分け常に正しい意思決定をしているのでしょうか?
『ジェイムズ・A・ムレイ』氏は、消費者が正確な意思決定をする上で障害となる様々なバイアス(偏向)があると説明しています。
①平均以上効果
本人や本人の能力を客観的に評価してもらうと、平均以上だと考える傾向が多いと言います。
残念ながら、全員が平均以上というのは統計的にあり得ないことです。
経済成長期に『1億総中流』という言葉がありました。経済格差が激しい今では考えられない言葉です。
②感情ヒューリスティック
好き嫌いという感情で物事をとらえ、情報をしっかり考えないことです。
闘争・逃走本能(闘うか逃げるか)と差し迫った状況で、直感的に行動し『正しいと感じる』ことで身を任せ、『間違っていると感じる』ことを避ける行為です。
『次はきっと勝つ』とギャンブルにのめり込むギャンブル依存症の人の思考です。
③アンカリングとアジャストメント
最初に提示した数字が心理的な基準となり、そこから調整が行われる現象を指します。
・『アンカー』:最初の基準
・『アジャストメント』:その後の微調整
アジャストメントは、『微調整』です。最初に基準を設置したものがイニシアティブを取るのです。
交渉で使われるテクニックです。
④アベイラビリティヒューリスティック
飛行機事故や宝くじの当選など、マスコミによって大々的に報じられるために、実際の確率よりも、起こる確率を大幅に大きく感じてしまう現象です。
自動車事故やパソコンの故障を消費者に煽って、保険商品や補償サービスを売り込むときに使われます。
⑤バンドワゴン効果
愛情や所属の欲求がグループ行動で機能すると、自分の考え方や嗜好に関係なく他者への協調行動につながります。
『集団思考』とも呼ばれます。
⑥確証バイアス
持論に合う情報だけを探そうとする傾向です。
自分に有利な情報だけに注目したり、自分に不利な情報を無視しようとする行為です。
以上、説明してきた意思決定におけるバイアスは、正しい消費行動を行う上での障害になりますので、あなたが商品やサービスの購入を意思決定をするときに、今は自分はこのバイアスにかかっていないか意識しながら行うとよいでしょう。
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