消費者の購買行動を『行動科学マーケティング』の力を使って解き明かそうとしてきました。
消費者は時として、経済合理性だけでは説明ができない不可思議な行動をとってきました。
行動科学マーケティング:経済的合理性だけでは説明できない消費者の購買行動
そうした消費者の購買行動を決定づける心理的メカニズムを理解できれば、消費者の欲求を満たすのに有効なマーケティング上の施策を打ち出せるのではないでしょうか。
これから、ご紹介する企業のマーケティング戦略は、すでにあなたが知っていいるものから、知らず知らずのうちに企業に誘導されているものもあるでしょう。
それでは、順に見ていきましょう。
消費者の購買行動を決定づける外的要因!
『ジェイムズ・A・ムレイ』氏はその著書『行動科学マーケティング』で、消費者の購買行動を決定づける心理的メカニズムについて詳しく説明しています。
しかし、消費者の考え方や行動を決定づけるのは消費者の思考や選好などの内的要因だけではなく、考え方や行動を劇的に変化させる外的要因がある『ジェイムズ・A・ムレイ』氏は、説明しています。
個人は外界から隔絶された状態で生きているわけではないからです。
人は『同調』といって、自分の考え、感情、行動を他人に合わせようとすることが往々にしてあります。
高校生のファッションなどがその典型例で、愛情や所属に対する欲求を満たすように行動するからです。
この人々の習性を利用したのが、アマゾンの『この商品を買った人は、こんな商品を買っています』という紹介です。
こうした他人の目を意識した行動は社会的心理学の範疇でこの心理を応用した企業戦略には次のようなものがあります。
・口コミ
仲間内での高評価は、広告メッセージよりも受け入れられやすい。
・バズマーケティング
計画的に消費者に話題になるように仕向けるマーケティング戦略。
・ステルマーケティング
社会的影響を悪用したもので、企業が巧妙に細工したマーケティング手法。
消費者の購買行動を決定づける価値評価は想定的なもの
消費者の購買行動を決定づけるものに『価値評価』というものがあります。
価値評価というのは、総じて『相対的』なもので、消費者は価値の基準を何らかのものと比べて評価する傾向にあります。
例えば、『知覚価格』というものがありますが、これは『高価格のものが、高品質である』と判断してしまうことです。
同じ、値段10,000円の商品でも、定価が10,000円のものよりも、定価が20,000円のものが半額になって10,000円の商品の方がお買い得に感じるというものです。
消費者が商品の価値評価を相対的に行うという習性を利用して、企業はいろいろな価格戦略をとります。
①端数効果
2,000円の商品と1,980円の商品とでは、価格差はわずか20円ですが、1,980円の方がだいぶ安く感じられます。
②先頭数字効果
端数効果と同じような効果ですが、人は金額の先頭の数字に強く影響を受けるというものです。
例えば先ほどの例では、人は1,980円の”1″千円という数字に強く影響され、2,000円の商品と4,000円の商品の価格差は2,000円ですが、1,980円の商品と4,000円の商品の価格差は3,000円ほどあると錯覚してしまうというものです。
③保有効果
商品を一度手に入れると、商品を初めて購入するときの場合に比べて価値評価がかなり高くなるというものです。
プロスペクト効果にも通じるものですが、人は得られる利益よりも失う損失の方を大きく意識する心理が働きます。
新しく手に入れるものは『利益』ですが、今持っているものを手放すのは『損失』と考えるからです。
この消費者心理を上手く利用したものが、『試供品』の提供であり、『お試し期間』です。
④妥協効果
極端な2種類の選択肢の間に、別の選択肢があれば、たとえ計算上の価値が適正でなくてもその選択肢を選んでしまうというものです。
消費者の価値の評価は相対的であるという典型的な例です。
よく食堂のメニューにある『松』『竹』『梅』のような価格設定がその例です。(特上、上、並も同様です)
たいていの人は真ん中の『竹』を選ぶのではないでしょうか。
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