『アンマーケティング』
スコット・ストラッテン、アリソン・クレイマー 共著
ダイレクト出版
『アンマーケティング』と言っても、マーケティング活動を否定するものではありません。
今までのマーケティングの方向性を見直すべきだとスコット・ストラッテン氏とアリソン・クレイマー氏の二人の著者は言っています。
従来のマーケティングはあまりにも『新規顧客獲得』のために比重が置かれすぎているからです。
『アンマーケティング』仮に邦題をつけるとしたら、『釣った魚に餌をあげましょう!』になると思います。
企業のマーケティングはもっと既存顧客との関与を重視すべきでは!?
『既存顧客』を『釣った魚』に譬えるのは少々不謹慎かも知れませんが、企業は『既存顧客』に対して『釣った魚に餌はいらない』のような対応をしている節もある気がします。
新規顧客獲得のために莫大な広告宣伝費を費やしています。
『無料お試しキャンペーン』も新規顧客を対象とした販売促進活動です。
一方で、既存顧客に対しては、これといったオファーもなく、企業の方でも既存顧客が熱烈なファンなのか、他に選択肢がないので仕方なく使っているのかよくわかっていないのではないでしょうか。
本来ならば、企業に長期にわたって売上と利益をもたらしてくれるはずの『既存顧客』をあまりに軽視していると言われても仕方ありません。
『メールマガジン』も商品やサービスの案内ばかりで、既存顧客との関係維持に努める姿勢が希薄だと感じます。
著者がこれほどSNSとりわけtwitterが大好きな理由!?
『アンマーケティング』のメッセージは、『顧客への関与を強めよう!』です。
マーケティングの本なのに、相当のページ数を『SNS』とりわけ『twitter』に割いています。
著者の『スコット・ストラッテン』氏は、twitterやFacebookを『ソーシャルメディア』と呼んでいます。
しかも、このメディアは従来の『マスメディア』と違うのは、『双方向のコミュニケーション』が可能ということです。
ところが、企業がtwitterを使うのは主に新商品や新サービスの紹介であり、従来通り企業から消費者への一方通行の情報伝達にしかなっていないケースが多いと『スコット・ストラッテン』は嘆いています。
せっかく、消費者の生の声が聞けるはずの『ソーシャルメディア』の利点を活かしていないと言っています。
まるで、『企業側の情報は聞きなさい! でも、あなたの情報は聞きません』と言っているようなものだと主張しています。
『スコット・ストラッテン』氏や『アリソン・クレイマー』氏もtwitterが大好きで、自身のtwitterには膨大な数のフォロワーがいます。そのため、彼らの『インフルエンサー』としての影響力は強大で、彼らが薦める商品やサービスには驚くほどの販売促進効果があります。
反対に、彼らが酷評する商品やサービスは消費者に受け入れられることはないでしょう。それが、どんなに巨大資本の会社のものであったとしてもです。Twitterなどのソーシャルメディアの力はそれほどまでに大きなものになったのです。
マーケティングというのは会社の一部の場所(組織)ではない!
このフレーズは、この『アンマーケティング』の本で私が一番心に残った言葉です。
なぜなら、私自身も『マーケティングというのは、「マーケティング本部」の人たちが考えるものだ』と思っていたからです。
でも、『スコット・ストラッテン』氏に言わせると、『マーケティングというのは顧客との関与に関わるすべてのことだ』ということです。
『スコット・ストラッテン』氏は、ラスベガスのリゾートホテルの掃除担当との会話でそのホテルに魅了されたと本書の冒頭で話しています。
その掃除担当者は、掃除の手をとめて、まっすぐスコット氏の目を見つめながら、心からの歓迎の意を表したと言います。
他のラスベガスのホテルでは感じたことのない経験だったようです。
要はマーケティング活動というのは、いかに顧客のことを気に掛けているかということに尽きるのだと思います。
そういう意味で、一方的に新商品の情報を発信している企業には顧客のことを気に掛けている様子をうかがうことはできないでしょう。
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