『行動科学マーケティング』書籍レビュー

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『行動科学マーケティング』

ジェイムズ・A・ムレイ著

ダイレクト出版

〜欲望の心理原則〜

この本は経済的な合理性では説明がつかない消費者の不思議な購買行動について解説した本であり、マーケティングという学問の教科書的な役割を果たす本でもあります。

なぜなら、著者のジェイムズ・A・ムレイ氏は自身が大学教授として学生たちにマーケティングの講義を施しているからです。

私も、大学では経済学を専攻し、『経営学』のゼミに属していました。

『マーケティング』に関する授業も受講していましたが、マーケティング用語は難解で、経済学部の学生(たいていは数学が苦手で経済学を専攻することになった)は、マーケティングの微分積分の公式に恐れをなしていた状態でした。

そんなとき、ジェイムズ・A・ムレイ氏の『行動科学マーケティング』が大学の授業のテキストに使われていれば、マーケティング理論も楽しく学べたのではないかと思います。

高度なマーケティング理論も楽しくわかりやすく学べる

ジェイムズ・A・ムレイ氏のマーケティング理論に関する解説はとにかく楽しくわかりやすいです。

例えば、消費者行動の基本となる人間の知覚という箇所では、誰もが感じるこんな疑問をわかりやすく解説しています。

よく、『トマトケチャップは好きだけど、トマトは食べられない』という人がいます。

これに似たことはよく私たちの耳にします。

でも、これを正しく説明できる人は少ないと思います。

ジェイムズ・A・ムレイ氏は、これを次のように説明しています。

これは『「味覚」と「味」は別物』ということから来ています。

『味覚というのは、食品と「味覚球(味を感知する器官)』の化学的結合であり、

味というのは食感や香りや匂い(嗅覚で感じるもの)、暖かさや冷たさなど総合的に感じるもの』ということです。

私はセロリがあまり好きではありませんが、サラダの中に少量のセロリがレタスやキャベツの中に紛れ込んでいるだけで、食べる前にセロリが入っていることがわかります。

『味覚受容体』というのは成人までに半減すると言われていて、小さな子供が野菜嫌いなのもわかるような気がします。

大人になってから食べられるようになるのも、単に味覚が鈍感になっただけなのかも知れません。

本書を楽しく読み終えた後は、あなたも行動科学マーケテイングの専門家!

マーケティング理論の根幹の部分ではありませんが、著者のジェイムズ・A・ムレイ氏がいかにユーモアのセンスがあるかということをうかがい知ることができる箇所があります。

私自身、この部分が本書で一番面白かったところです。

それは、消費者行動の知覚に関する箇所です。

筆者の父が子どもの頃(小学6年生)、『ママス&パパス』の『マンディマンディ』を歌い、聴衆は総立ちの拍手喝采状態だったと自慢しているが、観客が立ちあがって会場から出ていこうとしたというのが母親の意見だった。

本書の全編にわたってこんな調子ですが、肝心のマーケティング理論はしっかり学ぶことができます。

でも、せっかくですから、『行動科学マーケティング』に関する豆知識をひとつご紹介します。

知覚価格知覚品質というものです。

消費者は価格が高ければ、品質も高いと感じてしまうことです。

今、大規模小売店では、『プライベートブランド』というものが多く開発されています。

同一の素材から作られ品質も『ナショナルブランド(有名な全国区のブランド)』とまったく同じものですが、価格が安いということでなんとなく『ナショナルブランド』の方が品質も良いと思ってしまう消費者心理のことです。

価格が高い方が品質がいいと思ってしまうことを知覚価格といい、品質がいいと思い込んでいることを知覚品質といいます。

あなたが楽しみながら本書を読み終えるころには、あなたもりっぱな『行動科学マーケティング』の専門家になっていることでしょう。

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