消費者の購買行動は経済的原則では割り切れないところがあります。
その一例として、『ダニエル・カーネマン』氏が提唱した消費者の購入の意思決定に関する『プロスペクト理論』なるものがあります。
『人は利益を得る選択よりも、損失を回避する選択をする傾向がある』というものです。
多くの人が、3,000円の利益を得る選択よりも、3,000円の損失を回避する選択を選ぶというものです。
同じ3,000円という金額ですので消費者の選択基準では同じはずなのに不思議に思われます。
また、3,000円と価格表示されているものよりも、2,980円の方がずっと割安に感じられるのも、経済的な合理性だけでは説明できないでしょう。
今回は、こうした消費者の購買行動に関するマーケティングの用語を中心に解説していきます。
用語の解説というと退屈に思われるかも知れませんが、消費者の行動を理解する上で避けて通れないものです。
しかも、『ジェイムズ・A・ムレイ』氏の著書である『行動科学マーケティング』による解説ですから、退屈することはありません。
マーケティングとは!? 広告との違い!
マーケティングの用語を解説する前に、『マーケティング』そのものについて定義する必要があります。
『マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ。』
これはピーター・ドラッカー氏の言葉で、マーケティングの役割について端的に述べています。
『ダニエル・カーネマン』氏は、マーケティングの重要な役割として、
『消費者の新たなニーズ、常に変化するニーズに対応できる商品開発』としています。
マーケティングの概念として、一般に思われている『広告宣伝活動』や『販売促進活動』とちょっと違うような気がします。
『ダニエル・カーネマン』氏は、マーケティングを広告宣伝や販売促進よりも大きな概念であるとしながらも、広告の目的を従来よりも広く定義しています。
・広告の目的は、生産者と消費者のコミュニケーション
・広告の目的はブランドイメージの構築
マーケティングの基本〜STPとは!?
マーケティングの定義がされたところで、マーケティングの基本要素『STP』について見ていきましょう。
『STP』とは、
・Segmentation:セグメンテーション
・Targeting:ターゲッティング
・Positioning:ポジショニング
です。
順に詳しく見ていきましょう。
【Segmentation:セグメンテーション】
消費者を同質のグループに細分化し、そのニーズに合わせた商品を開発する
セグメントには次のような分類方法があります。
・人口統計学上のデータ
・心理学的要素(価値観、信条)
・購入履歴などの行動特性
【Targeting:ターゲッティング】
消費者をセグメントに分割したら、どのセグメントをターゲットにしたらよいかという問題に直面します。
ターゲットを増やすときの判断材料として、追加費用が追加利益利益を上回るようにするという『規模の経済のメリット』を考慮する必要があります。
【Positioning:ポジショニング】
ターゲットに対して、自社の商品を説明する一連のプロセス
顧客にどのようなイメージを持って欲しいのかを問うもの
マーケティング戦略の策定に欠かせないマーケティングの4要素〜マーケティングの4P
次に、マーケティング戦略の策定に欠かせないマーケティングの4要素〜マーケティングの4Pですが、これは有名なので聞いたことがあると思います。
マーケティングの『4P』とは、
・Product:商品
・Price:価格
・Placement:場所(立地条件)
・Promotion:販売促進
です。
それでは、こちらも順に詳しく見ていきましょう。
【Product:商品】
販売する商品やサービスです。
ただ、マーケティングの4Pのひとつとしての商品の概念は、あらゆる『商品特性』を指します。
【Price:価格】
価格については、マーケティング戦略上次のような価格設定が考えられます。
・プレミアムプライシング
他の商品に比べて高価格に設定し、高品質であるということをアピールします。
・エコノミープライシング
他の商品に比べて不必要な機能を除外して低価格で販売します。
・ペネトレーションプライシング(市場浸透価格)
意図的に本来の価格よりも低く設定し、市場シェアの拡大を図ります。
・スキミングプライシング
市場競争が激しくないこと(市場の独占、寡占状態)を理由に高価格を設定します。
他者の市場参入を前に最大限の利益をすくい取ろうという戦略です。
【Placement:場所(立地条件)】
販売場所というと単なる立地条件を想像するかも知れませんが、ここでは、販売の業態(スーパーマーケット、コンビニエンスストア、自動販売機など)も考慮する必要があります。
【Promotion:販売促進】
販売促進は、企業が商品について市場に発信するあらゆるメッセージでその範囲も広範囲及びます。
現在の販売促進は従来の広告活動にとどまらず、インターネットの普及で様々な統合型マーケティングのコミュニケーションを想定する必要があります。
マーケティング活動に影響を与える外的要因〜マーケティングの5C
最後に、マーケティング活動に影響を与える外的要因〜マーケティングの5Cを説明します。
マーケティングの『5C』とは、
・Customer:顧客
・Company:企業(自社)
・Competitators:競合相手
・Collaborators:協力者
・Climatate もしくは Context:環境
です。
それでは、こちらも順に詳しく見ていきましょう。
【Customer:顧客】
既存顧客とその要望、選好に影響を受けますが、潜在顧客や顧客でない人たちの動向も把握しておく必要があります。
【Company:企業(自社)】
自己分析のようなもので、得意領域や不得意領域を把握するためにSWOT分析が有効です。
【Competitators:競合相手】
自社の商品やサービスと直接比較対象となる企業は把握しやすいですが、自社の商品やサービスの代替手段となる商品やサービスの提提供者も競合相手と成り得ます。
【Collaborators:協力者】
ビジネスパートナーとして協力し、相互の利益につながる相手を指し、一般的には取引先、小売店などが協力者としてあげられます。
【Climatate もしくは Context:環境】
事業を左右する外部環境は多岐にわたっていて、法律や政治、経済、技術、文化と様々な要素があります。
以上、マーケティングに関わる用語を見てきましたが、今後、マーケティングの様々な理論を学ぶために必要な基礎知識ですから、しっかりとおさえておきましょう。
これで、あなたも『ジェイムズ・A・ムレイ』氏の著書『行動科学マーケティング』を楽しく読み続けることができるようになったことでしょう。
また、これから直面する消費者の購買行動のしくみやマーケティング政策の意味についても深く理解するための基礎体力がついたはずです。
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