2022年3月20日(日)に静岡県の浜名湖湖畔にあるリゾートホテル『浜名湖レークサイド』にて、『痛みの専門家医』である『愛知医科大学学際的痛みセンター』の『井上真輔』先生によるセミナーが行われました。
講演のタイトルは『痛みの専門家による“身体の痛みの上手な対処法”』です。
井上先生が所属する部署が『学際的な痛みセンター』と『学際的』とあるのは、通常私たちはカラダに痛みがあると『整形外科医』に受診すると思いますが、この医療機関は患者の『痛み』を感じることへのカラダや心への影響そしてそれに伴う社会的活動の制限という問題に対処するために『整形外科医』だけではなく『内科医』、『心療内科医』などがチームを組んで治療にあたっているからです。
私も今年の正月に腰を痛めて2ヵ月近く腰痛に悩まされていました。最近、『水中歩行』を中心にリハビリを始めましたので、このセミナーの内容には大変興味がありました。
中高年になると、腰や膝などの痛みを訴える人が増えてきます。運動器の痛みは、くらしの中での活動を妨げ、自立度が低下して介護が必要になったり、寝たきりとなる原因になりますので、健康なうちから予防を心掛け対処していきたいものです。
セミナーでは運動器の痛みの予防や健康的にすごすための簡単なエクササイズを実演していただきましたので、みなさまにもお伝えしたいと思います。
『痛みセンター』で扱う『痛みとは!?』痛みの種類について
まず、痛みについて考えるときに、痛みの種類にはどのようなものがあるか知る必要があります。
痛みの種類は大きく分けると次の2種類です。
- 急性的な痛み
- 慢性的な痛み
『急性的な痛み』とは、ケガをしてカラダが治癒するまでに伴う痛みです。人間のカラダはケガをしても一定期間を経過すれば回復するようになっています。だいたいの目安ですがカラダの組織ごとにだいたい以下のような目安になっています。
- 傷(皮膚の損傷)・・・2週間
- 筋肉 ・・・6週間
- 骨 ・・・3ヵ月
- アキレス腱など腱・・・1年間
それに対して『慢性的な痛み』というのはケガから回復しても、もしくは原因もわからないまま継続している痛みをさします。
現在、慢性的な痛みを抱えている人は日本に1700万いるといわれていますが、痛みを抱えているカラダの部位は男女とも『腰』、『肩』、『膝』の割合が高くなっています。
『痛み』がヒトに与える影響~身体的・精神的・社会的な影響
カラダに痛い部分があるとそれだけで大変な苦痛ですが、しかしその影響は身体的な影響だけにはとどまりません。
つらい痛みが続くと、『この痛みはいつまで続くのだろうか?』、『もっと悪くなるのではないか?』と心理的な不安も感じるようになり、気分が落ち込んだり、心配で不眠になったりすることもあります。
また、『痛い』ということを共感してほしいため、家族や周りの人にカラダの痛みを伝えたくなります。本人は痛くてつらいのでしょうが、周りの人はそのつらさを理解するのが難しくて次第に疎ましく思えたりします。
そのような状況が続くと、働く意欲もなくなり就労も難しくなり社会的な活動が制限されてきます。
つまり、カラダの痛みが身体的な苦痛だけではなく、心理的にも不安定な状態になり社会活動も制限されてしまうという危険もあるのです。
『痛みセンター』では、たとえ痛みがあっても元気にすごせるように患者さんの支援をしています。痛みが原因で就労できなくなった人に対して『ペインマネジメントプログラム』を実施して再び社会復帰できるような支援も行っています。そして、75%の人がまた職場復帰に成功しているという高い復帰率に驚きました。
『痛み』に負けない健康的なカラダつくりに必要なもの
慢性的な痛みが続くと身体的な影響だけではなく、心理的にも影響があり社会的な活動も制限されてしまうなどの影響があるので、そうならないように予防することが大事です。
そのためには、次の3つの『健康の要素』に重点的に取り組む必要があります。
- 運動(姿勢)
- 栄養
- 睡眠
姿勢に関していうと、私たち日本人は欧米の人たちに比べて慢性的な痛みを感じやすい身体的な特徴があります。
それは、『農耕民族』か『狩猟民族』かの歴史の成り立ちに関係があります。
農耕民族である私たち日本人は、田植えや稲刈りなどの農作業を考えるとどうしても前かがみで動作もカラダを縮める方向に動かしがちです。
一方の『狩猟民族』である欧米人は、狩をする際に弓を引くなどカラダを広げる方向に動かすことになります。
どうしても私たち日本人は前のめりつまり猫背になりやすく、重い頭を前に傾けながら支えているためどうしても腰に負担がかかるのです。そのため、日本人はカラダの前半分の筋肉が発達することになります。カラダの後ろの部分の筋肉が弱いため肩こりや腰痛になりやすいのです。
『痛み』に負けないカラダつくりで鍛える部位と運動方法は!?
慢性的な痛いが発生しやすい日本人の身体的な特徴がわかったら、自ずと鍛えるカラダの部位が明らかになることでしょう。
私たち日本人が鍛えるべき筋肉は以下のとおりです。
- おなかの筋肉(腸腰筋)
- おしりの筋肉(殿筋)
- ももうらの筋肉(ハムストリング)
- 後背筋
鍛えるべき筋肉がわかったところで、ではいったいどうやって鍛えるのかという点についてセミナー講師の井上先生が実演してくれました。先生おすすめのエクササイズは以下のとおりです。
- 椅子スクワット
- その場ももあげ
- お尻あげ
- プール歩行(大股)
『椅子スクワット』ですが、みなさんがよくやる間違いに、膝の屈伸に重点を置くということです。鍛えるのはあくまでもお尻の筋肉やハムストリングです。膝はつま先よりも前に出ないように注意しましょう。そうすると必然的にお尻を突き出す格好になりますが、後ろに倒れてしまう危険性があります。そのため、椅子を使ってそこに腰を下ろすようにすれば安全です。
コツは『股関節』を折り曲げるという意識を持つことです。姿勢を正しい形に保つためにはより大きな筋肉を使う(鍛える)ことです。大きな筋肉を使うということは正しい姿勢を維持するだけではなくスポーツのあらゆる場面で重要なことです。大きな筋肉を使うことを覚えればゴルフの飛距離だって伸びるはずです。
『その場でももあげ』のポイントは、ももを上げる際に上半身を前に倒さないことです。振り上げる足よりも軸足の方に意識を集中させ、軸足で地面を踏みつけるように意識するとよいでしょう。
『お尻あげ』のポイントは、当たり前ですが『お尻』を持ち上げるようにしましょう。腰を上げようと意識すると腰に負担がかかります。お尻に意識を向けましょう。
『プール歩行』は、陸上の歩行と違って『浮力』があるため様々な利点があります。まず、バランスを保ちやすいという利点。その他にも、リラックスできること、歩行の速さを変えることによってさまざまな水圧による負荷を調整できることがあげられます。また、水温は一般的に体温よりも低いため新陳代謝が促進され陸上の歩行よりも効率的に『有酸素運動』ができるメリットもあります。それから歩き方のポイントとして、踏み出す足よりも残した足に意識を集中して、手も後ろ方向に引く方に意識を集中して大股で歩く方が効果的です。
最後に、健康を維持するたもの食事の取り方ですが、ダイエットのことを考えると『炭水化物』と『脂質』はなるべくとらない方がいいと思われがちですが、極端に摂取量を減らすと『炭水化物』の場合は脳の働きが低下しイライラや判断力の低下や注意力の低下、疲労感につながります。脂質の不足はホルモンバランスを崩す原因になるので注意が必要です。
みなさまもお家でできるエクササイズで適度に運動し、バランスのよい食事に心掛け慢性の痛みに対する予防をしましょう(^^♪
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