あなたのサイトに訪れた人を熱狂的な顧客に変える方法は、顧客に感動を与える決定的な瞬間を作り出せばいいというお話をしました。
顧客に感動を与える決定的な瞬間を作り出すことがなぜ重要であるのか、どうして熱心な顧客になってもらえるのかという理由もお話しました。
さらに、決定的な瞬間をあなたも作り出すことができるということと、その方法について説明してきました。
顧客に感動を与える決定的な瞬間をあなたは作り出すことができる!
決定的な瞬間というものはどのようなものかを説明する際に、次のような要件が必要であるということでした。
①高揚感
②気づき
③誇り
④結びつき
今回は、『高揚感』について詳しく説明していきたいと思います。
高揚する瞬間を作り出すための3要素
高揚する瞬間を作り出すために必要な要素にはどのようなものがあるのでしょうか?
そのことについては、今回も、『チップ・ハース』、『ダン・ハース』のふたりの著者による『顧客を魅了し、社員のやる気を引き出す心理術〜瞬間のちから』という書籍から学んでいきたいと思います。
【高揚する瞬間を作るための3要素】
①感覚に訴える
②期待を膨らませる
③台本を逸脱する(いつもと違うことをやってみる)
以下、それぞれの要素について詳しくみていきましょう。
【感覚に訴える】
『最高の瞬間』というのは、何か特別なことが起こるときなので、外見もいつもと同じという訳にはいきません。
各種セレモニーには、それに相応しいい服装があります。
例えば、結婚式では、ウエディングドレス、成人式には振袖、卒業式には袴などです。
また、スポーツイベントでは、ひいきスポーツチームのユニフォームがそれです。
【期待を膨らませる】
スポーツでいえば、練習ではなく、試合や大会
期待とはちょっとニュアンスが違うかも知れませんが、仕事ではノルマ(目標)や締め切りです。
【台本を逸脱する】
この台本を逸脱するということを説明するのにふさわしい事例があります。
『瞬間のちから』の本の中で紹介された事例です。
フロリダに家族旅行で出かけたハーン夫妻とその息子の話です。
幼い息子は家族旅行の際にお気に入りのキリンのぬいぐるみ『ジョシー』を忘れてきたことに気がつきました。
父親クリマ・ハーン氏は息子をなだめるため『ジョシーはフロリダで休暇を楽しんでいる』と安心させようとしました。
するとしばらくして宿泊先の『リッツカールトン』のスタッフから『ジョシー』が見つかったという連絡を受けます。
父親は子どもを心配させないため『ジョシーはフロリダで休暇中だと息子に説明している』とホテルのスタッフに告げ、プールサイドのラウンジでバケーションを楽しんでいる写真を撮って欲しいと頼みました。
数日後戻ってきた『ジョシー』にはアルバムが添えられていて、プールサイドでくつろいでいる写真やゴルフカートを運転しているものやスパでマッサージを受けているもの、管理人室で防犯カメラをチェックしている姿が映っていました。
ハーン夫妻は大喜びし、息子も有頂天となり、そのことを書いたブログは評判になりました。
このブログが人気を博したのも、良い意味で期待を裏切られたからです。
リッツカールトンでは、ぬいぐるみを抱えたスタッフが数時間かけて館内を回り、おどけた写真を撮ってくれたのです。
これは本来のホテルの履行業務を超えた業務外の仕事です。
本来のホテルの業務が台本だとすると、これは台本を逸脱した業務です。
ここで、大事なことは台本を逸脱するためには、本来の台本をきちんと理解しておく必要があるということです。
本来の仕事が適切に行えてこその、台本の逸脱であるべきだからです。
サプライズも頻繁に行うと顧客に飽きられるのでは!?
台本の逸脱は、いわゆる『サプライズ』ですが、これを頻繁に行うと顧客に飽きられるのではという心配があります。
それを回避するにはちょっとした『無作為性』を取り入れるとよいでしょう。
例えば、『無料のプレゼント』を贈るにしても、何回に一回の割合で抽選の上行うというアイデアはどうでしょうか。
また、ある程度現場のスタッフにサプライズの手段を任せてしまうというのも手です。
起業家の『スコット・ベック』氏はそのことについて次のように主張しています。
『素晴らしいサプライズが小売りビジネスの基本原則だ!』
彼は、レンタルビデオの『ブロックバスタービデオ』やローストチキン専門店の『ボストン・チキン』、ベーグルショップの『アインシュタイン・ブロス・ベーグル』の小売業を展開し、まさに彼の考えを自分のビジネスで実践しています。
『スコット・ベック』氏は、『顧客のメリットになるように「プラス変化」(サプライズ)を増やすのは、基本システム(台本)に「人間性」と「自発的行為」を取り入れることにより、従業員に台本を逸脱する権限を与える!』と言っています。
サプライズをマニュアル化することはできないのです。
組織文化を大きく変えた『決定的な瞬間』!?
決定的な瞬間は、個々の顧客だけではなく組織全体の文化をも変える力があります。
その好事例として『瞬間のちから』の本の中で次のような事例が紹介されています。
ジーンズの『ラングラー』や『Lee』、カジュアルブランドの『ティンバーランド』、アウトドアブランドの『ノースフェイス』などを手がげる持ち株会社『VF』コーポレーションの話です。
同じアパレル業界の事業でありながら、各ブランドの担当者は他の事業との情報交換はほとんどしていなかったという状況で、持ち株会社としては組織文化を何とか変えたいと考えていました。
そのため、ロサンゼルスで開催されるリーダー研修をその転機としたいと考えました。
当日、会場にはその研修に集まった150名の参加者に用意されていたものは人数分のソファだけでした。
CEOの『エリック・ワイズマン』は開会のあいさつをすると、『2日間の研修期間中は外に出て新たなアイデアを探すよう』指示して話を切り上げました。
参加者全員、バスに乗り込み別々の場所に出かけていきました。
行った先は、ビューティーサロンのワークショップ、落書きアーティストとの落書き体験、マリンビーチでのサーフィンのレッスン、人気シェフによる料理教室と様々なものでした。
スタッフには何か夢中になれる『行動』をし、何かを感じてほしいというのがこの研修のねらいでした。
まさに、この研修が組織文化を変える『決定的な瞬間』となりました。
その後の持ち株会社『VF』コーポレーションの売上は6年間で70億ドルから130億ドルに倍増しました。
この変化は私も顧客のひとりとして感じるものがありました。
私が最初に『ノースフェイス』ブランドに出会ったのは、『ヘビーデューティー』という概念が流行った頃でした。
ノースフェイスのダウンジャケットと言えば、本格的なアウトドア志向の人たちが身にまとうアイテムでした。
ところが、最近ではノースフェイスのTシャツやトレーナーを着た若者を多く見かけるようになりました。
『VFコーポレーション』の『リーダー研修』の『外に出てアイデアを探そう!』というテーマに通じるものを感じました。
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