個人と会社を成功に導く『魂』の説得術
『ソウルフルネス』
ジェイソン・ハリス 著
ダイレクト出版
これは広告の本ではなかったのでしょうか?
確かに著者の『ジェイソン・ハリス』氏は広告代理店のCEOを務める広告のエキスパートです。
なのに、この広告に関する本『ソウルフルネス』の最初の1章はまるまる『デビット・ボウイ』の伝記を読んでいるかのようです。
説得力のある人柄を形成するためにはあなたの素の自分を出した方が効果的!?
『ソウルフルネス』の最初の1章はまるまる『デビット・ボウイ』の話に費やしているのは、理由があります。
この本のテーマは『説得力』です。
広告のプロである著者の『ジェイソン・ハリス』氏は、説得力をコピーライティングなどの技法ではなく、個人の性格や人柄の上に成り立っていると説いています。
そして、説得力のある人柄を形成するためにはあなたの素の自分を出した方が効果的だとも言っています。
そこで、『デビット・ボウイ』の登場です。
『デビット・ボウイ』はデビュー当時、流行りの音楽に自分を合わせて大衆に迎合しようとしていました。
しかし、彼の音楽からはデビット・ボウイのオリジナリティを感じることはできず大衆の支持を集めることはできませんでした。しかし、アルバム『スぺイス・オディティ』をリリースしたころから状況が一変し、世界的なロックスターの道を歩み始めることになるのです。
デビューアルバムからこのアルバム『スぺイス・オディティ』をリリースするまでの2年間にデビット・ボウイはいかにしてありのままの自分になるか、どうしたら自分をよりよく表現できるかを探求し続けたといいます。そして、今までの古い音楽の概念を覆すような唯一無二の存在となったのでした。
なぜ、素の自分を出すことが、顧客から信頼を勝ち取り商品を買ってもらうことにつながるのでしょうか。
顧客は、上辺だけ彼らに同調するかのようなセールスマンの心理を見抜いています。愛想笑いや顧客の話にさも興味があるかのような大げさの反応にうんざりしています。そこに、自分の素をさらけ出した人は顧客には信用してもらい、顧客の方も心を開き自分の話をするようになります。
著者の『ジェイソン・ハリス』氏は、『説得』とは、相手を打ち負かして何かを買ってもらうことや、売り手の思うように顧客に行動を強要するものではなく、共感を持ってもらい顧客に行動を促すものだといいます。
顧客の行動を促すストーリーテリングの力とは!
『ソウルフルネス』の次の章ではストーリーテリングの力について説明しています。
『ジェイソン・ハリス』氏は、自らCEOを務める広告代理業務を行う会社でまさにストーリーテリングを使った広告を作成しています。
広告やセールスの世界では、『ストーリーテリング』を用いた手法がもてはやされていますが、実際にこの手法を用いて広告を作成している企業はまだまだ少ないのではないでしょうか。
『ストーリテリング(物語り)』がなぜ説得に役立つのかは言うまでもないことかも知れませんが、いくつか理由をあげると、まず、人は他人から押し付けられて何か行動を起こすことを嫌います。それよりも自分から考えて結論を見出す方がよほど気分がいいものです。
『ストーリーテリング』には、あなたのメッセージを物語の中に忍び込ませ、顧客が自分でも意識しないうちに自分からその結論にたどり着いたと思わせる効果があります。
また、ストーリー(物語り)には、物語りの主人公に感情移入することによって別の世界に聞き手を連れ出したり、情緒のレベルで物事を理解してもらう力があります。顧客の行動を変えるためには顧客の考え方を変える必o要があります。顧客の考え方を抵抗なく変える力がストーリーテリングにはあるのです。
顧客を説得するのに有効なのは共感や寛容さである!
広告関連の本でありながらタイトルが『ソウルフル』というのは何か不思議な気がします。
広告関連の本であれば、顧客との心理的な駆け引きをテーマとしたものかと想像しますが、著者の『ジェイソン・ハリス』氏は説得に必要なものは、『寛容さ』や『共感』など駆け引きとは程遠いものを強調しています。
例えば、『寛容さ』を説明する際に、それとは正反対の行為を例に出しています。
商品やサービスを買ってもらいたいとか、顧客に何かをしてほしいときにだけ訪れてくる人は誠実ではないということです。反対に、会うたびにわずかでも相手に喜んでもらえる情報を与えていれば、何かを提案したり物の見方を変えてもらうように促したりしたときに受け入れてもらえる可能性が高いということです。
そして、『共感力』相手の心で理解できる能力は、相手の感情を把握し、相手を尊重し、相手と寄り添いながら問題を解決していくというよりポジティブな説得を可能にするのです。
そう意味で『ジェイソン・ハリス』氏はこの広告関連の書籍、説得のスキルに『ソウルフル』という人間らしさを感じさせるタイトルをつけたのだと思います。
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